宇宙と素粒子。遠くて近い密接な関係を記した書籍を紹介!

 

物質の基本要素は素粒子である。

 

人類は物質の基本要素を追い求めて昔から探求してきました。

素粒子物理学は、物質の最小構成を求めて、微小な構造を追い求めてきました。

 

一方、宇宙には星が生まれたり、ブラックホールが合体したり、さまざまな現象が発生しています。

素粒子物理学と天文学は全く違うように見えますが、実は密接に結びつきがあるのです。

 

近年、望遠鏡の性能が飛躍的に向上しました。

宇宙にも望遠鏡を打ち上げて、地上では見ることのできないようなものまで観測できるようになりました。

遠くの星を見るということは、過去の宇宙を観測することになります。

ずっとずっと遠くまで観測できれば、宇宙がどのようになっていたかがわかります。

しかし、どんなに望遠鏡の性能を上げても決して観測できない壁があるのです。

 

それはビッグバンから38万年後までの時代です。

38万年までは、光子が束縛された状態になっているため、そもそも光での情報が得られないのです。

すなわち、ビッグバンから38万年までは別の方法で探ることになるのです。

 

そこで登場するのが、素粒子物理学です。

宇宙ができた当初は素粒子が入り乱れていました。

宇宙の温度が下がってきて、原子ができ、そこからいくつかの元素ができ、それらが集まって、星が形成されと、宇宙の様子が変わってくるのです。

 

すなわち、原子に莫大なエネルギーを与えると、原子の中に束縛されていたものが垣間見られるということなのです。

これは、まさしく宇宙の初期にどうなっていたかを調べることと同じことです。

 

今回は、特に宇宙論を勉強したい君に、この素粒子物理学について、わかりやすく解説した書籍を紹介します。

 

 

素粒子は、物質を構成する最小単位のことです。

以前は原子核を構成する陽子と中性子が最小単位だと思われていました。

しかし、研究が進むにつれ、陽子や中性子にも構造があり、もっと小さいクォークやレプトンなどが存在することがわかったのです。

 

さらに、高校物理で学習する電磁力。

力が働くのはわかるのですが、どうして力が伝わるかまでは書かれていません。

突然、距離の2乗に反比例し・・・と書かれた文章が出てくるのです。

高校物理の教科書に近接力(近接作用)や遠隔力(遠隔作用)という言葉がでてきたかもしれません。

 

近接力は、力の伝播は何らかの媒質によって伝わるという考え方です。

遠隔力は、物体間の距離を無視して瞬時に力が伝わるという考え方です。

 

実は電磁気力は素粒子の一つである光子が関与していることがわかったのです。

つまり、電磁気力は近接力なのです。

瞬時には伝わらないのです。

 

さらに強い力や弱い力も素粒子が関与しています。

ただ、残念なことに重力だけは関与している素粒子が見つかっていません。

 

しかし、他の三つの力が素粒子が関与しているのだから、重力も何からの素粒子が関与しているだろうと予言されています。

このようなことは、素粒子物理学の歴史の中で少しずつ、理論が作られたり、実験で素粒子が見つかったりした積み重ねです。

この素粒子の理論がどのように作られ、そして見つかっていったか、4つの力の力のなぞについて、高校生にもわかるように書かれた書籍が、こちら。

 

宇宙は何でできているのか
素粒子物理学で解く宇宙の謎

村山 斉著
幻冬舎新書
(2010年)

です。

この本は、宇宙は何でできているのかという問題的から始まり、素粒子発見の歴史をたどっていきます。

 

そうそう、私たちの周りは物質でありあふれていますけど、どうして反物質がないのかという部分にも触れていますよ。

2010年の本なので、ビックス粒子が見つかっていない時に書かれた本です。

 

そのため、ビックス粒子の部分の記述は古くなってしまっていますが、アインシュタインの相対性理論のころから小林・益川理論までの流れは、歴史を忠実にたどっていますので、問題なく読むことができます。

素粒子物理学の発展の歴史をたどりながら、素粒子とはどんなものかを知ることのできる内容となっています。

 

素粒子物理学の概要を学習することは、実は天体について理解することでもあるのです。

太陽を始めとした恒星は、核融合反応でエネルギーを放出しています。

恒星は核融合反応でボウタイなエネルギーを放出しているのですが、このプロセスも素粒子レベルでみて、初めて理解ができるのです。

 

例えば、水素原子4つとヘリウム原子1つの質量は、ヘリウム原子質量のほうが軽いことがわかっています。

太陽で起こっている核融合反応は、水素から最終的にヘリウムになる反応です。

 

つまり、質量が軽くなったということは、何らかのロスが生じたことになります。

質量とエネルギーは等価であるという式:\(E = mc \) から、質量が軽くなった分というのはエネルギーが持ち去られたと考えるのと同等になります。

持ち去られたエネルギーを運んでいるのが、ニュートリノなのです。

すなわち、素粒子であるニュートリノを観測するということは、恒星の中で何が起こっているかを調べるということにもつながります。

このように、素粒子物理学と宇宙は遠いようでいて、密接に結びついています。

 

もし興味がありましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。