高校の数学で学習するベクトル。
でも、学校によっては物理の最初のほうに出てくる相対速度や運動方程式のところで学習するほうが早いかもしれません。
相対速度は物理を挫折するかもしれない最初の難関でもあります。
ベクトルは向きと大きさをもったもの。
意味を理解してしまえば、そういうことかと納得できるかと思いますが、初めて出てくる概念を理解するまでに時間がかかるのは当然の話です。
さらに相対速度で出てくる数学には、sinθ、cosθ、tanθといった三角関数もでてきます。
角度によっては、三角関数の値を覚えている必要も出てきます。
つまり、短期間のうちに次々と新しい概念を学びながら物理を進めて行くことになるのです。
そして、これらの概念は相対速度だけで使うのではなく、その先の運動方程式や電磁気などでも必ず使います。
そのため、相対速度は物理を学ぶ上で最初の難関なのです。
ベクトルや三角関数は理系であれば数学で必ず学びます。
しかし、物理のほうが先行している可能性があるため、どういうものかを理解するのが難しいかもしれません。
ベクトルや三角関数は物理の問題を解く上で、非常に重要な要素です。
三角関数は概念はともかく、公式や値を覚えることである程度対応できますが、ベクトルはそうもいきません。
意味を理解しておかないと、問題が解けないからです。
そこで今回は、ベクトルを理解するのに役立つ本を紹介します。
ベクトルで最初に「?」と思うのは、位置が違うのに同じものあるという考え方です。
つまり、同じものが無数に存在するのです。
今まで同じものが無数に存在するという概念は学習していません。
例えば関数だと、\(y = x\) と \( y = x + 1\) は傾きは一緒ですが、違う関数として扱います。
ところがベクトルは、向きと大きさが一緒であれば、平衡移動させたベクトルも全く同じであるということなのです。
新しい概念を受け入れようとがんばるのですが、すぐに受け入れられるのは人間の性質上、難しいのです。
しかし、この概念を受け入れない限り先に進むことはできません。
そんなベクトルという新しい概念について、主人公たちが疑問に思いながらベクトルとはどんなものかを話していく内容の書籍が
数学ガールの秘密ノート ベクトルの真実
結城浩著
SB Creative
です。
数学ガールは、三人の高校生が数学の問題に挑戦する物語です。
話題に出てくる数学の内容は高校生から大学生で学習するようなものですが、できる限りわかりやすく書いてあるため、高校生でも読める内容になっています。
このシリーズは、さまざまな数学のテーマについて扱っていますが、ポアンカレ予想やフェルマーの最終定理など、出てくるテーマはどちらかというと難しい問題が多いです。
その著者が、数学ガールシリーズの派生として、中学・高校の数学で学習するような内容のテーマを扱ったものを出版しました。
数学は理解できれば「なーんだ」ということが多いのですが、その内容を理解するまでに
- 時間がかかったり、
- イメージができなかったり、
- 内容がよくわからなかったり、
といったことがよくあるのです。
たぶん、授業ではなんとなく「?」というレベルだと思いますが、こういう「?」が積み重なっていつのまにかわからないという事態につながるのです。
この書籍は、止まっているのに加速度が0じゃないという疑問からスタートします。
力学の問題ですね。
そこからベクトルの話がでてきて、平行四辺形の対角線を利用したベクトルの和がでてきます。
これだけにとどまりません。
どうして平行移動させたベクトルも同じであるという概念とはどのようなものかについても話しています。
この概念、数学では初めてで来る概念ですが、実は日常生活で慣れ親しんでいるのです。
初めて読んだときは、「あ、そっか!」と思ってしまいました。
この先は、主に数学で学習する内容になってしまいますが、宇宙を学びたいと考えている君には、ベクトルは必須なので、授業で習う前に読んでもいいかと思います。
ベクトルのかけ算の話やベクトルの平均の話。
学習していないと難しい内容かも知れません。
でも、著者がこの本の最初にこうメッセージを書いています。
彼女たちの話がよくわからなくても、数式の意味がよくわからなくても、先に進んでみてください。でも、彼女たちの言葉にはよく耳を傾けてね。
そのとき、あなたも数学トークに加わる事になるのですから。
まずは会話に参加することなのです。
ここに出てくる内容は、ほぼ高校数学で学習します。
初めて学習する概念を理解するのに時間がかかるのは当然です。
理解しようと必死になるかもしれません。
でも、この本を読んで「理解するぞ」という感じで読むのではなく、こんな疑問もあるんだなと軽い気持ちで読むほうが何かの発見につながると思います。
もしベクトルで「?」と思ったら、この本を読んでみることをおすすめします。
頭の片隅にある小さな「?」が解決できるかもしれませんよ。