各地の大学に宇宙を専門としている先生方がいらっしゃいます。
アストロ部でも
として、まとめてあります。
宇宙を研究したいのであれば、宇宙を専門としている先生方がいらっしゃる大学に進学するのは当然の流れです。
しかし、大学の進路を決めるときには、他に考慮していただきたいことがあります。
ここでは、特に天文・宇宙物理学を研究したい君に、理学部系の大学の進路を決めるとき、考慮すべき内容についてお話しします。
高校理科の選択は「地学」ではなく「物理」の理由は?
アストロ部で以前書いた記事
で、高校理科の選択科目で「物理」は必ずとってほしい科目であると書きました。
理由は、天文・宇宙物理学は、物理学と密接に結びついているため、天文現象・宇宙現象を理解しようとするならば、必ず大学レベルの物理学の知識が必要になってくるからです。
これは、天文・宇宙物理関係の大学院入試の試験でも物理(それに関連した数学)の問題を必ず解く必要があることからも言えることです。
高校で物理を学ばなくても、大学で微分・積分などを使ってもう一度やるから大丈夫といううわさも時々聞くことがあります。
確かに、力学の運動方程式や電磁気など微分・積分などを使ってもう一度学習します。
しかし、高校の範囲でかぶる力学や電磁気学の部分は、それぞれ半年(2コマ)程度しかありません。
その期間のうちに、高校物理で学習しなかった内容も学ぶのです。
高校での物理を学習する2年もしくは3年の土台を、たった1年で作り、さらに大学物理のレベルにまで持って行く必要があります。
しかも、物理は暗記科目ではありませんので、考え方が身につくまである程度の時間が必要です。
希望の大学に入ったはいいけれども、大学物理について行けなくて、天文・宇宙物理学の道を諦めたということになっては本末転倒です。
大学入試試験で物理を使うかどうかは別としても、高校物理を選択していただきたい理由は、ここにあるのです。
研究したい内容に近い先生がいる大学が君にとっていいとはかぎらない訳
次に、大学を選ぶ際に考慮すべき内容についてです。
志望する大学に宇宙を研究している先生がいらっしゃることはもちろんですが、それ以外にも考慮すべき内容を以下にまとめました。
- 宇宙を研究している先生がいらっしゃること
- 大学物理をしっかりと学べるカリキュラムになっていること
- 教職もしくは学芸員の資格がとれること
先の章「高校理科の選択は「地学」ではなく「物理」の理由は?」でも、書きましたが、大学物理の内容は天文・宇宙を理解する上で必ず必要になるものです。
宇宙を研究している先生がいらっしゃることはもちろんですが、それ以外に重視する必要があることがあります。
それは、
大学物理をしっかりと学べるカリキュラムになっているかどうか
ということです。
宇宙関連の講義の多さも気になるかもしれませんが、それよりも大学物理をしっかりと学べるかどうかの方が重要です。
例えば、高校地学では、「恒星の色」と「恒星の表面温度」を調べるときに、ウィーンの変位則やシュテファン・ボルツマンの法則が与えられていて、その式を用いて問題の答えを計算します。
このウィーンの変位則やシュテファン・ボルツマンの法則を深く学べるのは、実は物理の
熱力学・統計力学
です。
また、天体の運動は重力の運動方程式を解くことによって求めることができますが、これは紛れもなく
力学
の範囲です。
さらに、重力が非常に大きくなると、
一般相対性理論
を理解する必要があります。
このように、天文・宇宙物理学の分野では物理の知識は必要不可欠なのです。
天文・宇宙物理学の分野で物理の知識が必要であるということは、博士前期課程や修士課程に進学する際に受ける試験:大学院入試の専門選択問題でも現れています。
どの研究室に所属を希望するかで大学院を決めることになりますが(実は、大学院に入学しないと所属できない研究室もあります。)、どの大学院の試験を受けるにしても必ず、
大学で学習する物理
の問題を解く必要があります。
問題を選択できる場合でも、物理の問題を解く必要がある、選択必須科目になっています。
大学院の入学試験問題で物理を指定するということは、天文・宇宙物理学の分野の研究では、物理の知識が必要であることを物語っているのです。
従って、君の興味のある分野に近い研究をしている先生がいらっしゃる大学が、必ずしも君にとっていい大学とは限らない点に注意する必要があります。
むしろ、君が大学院に進学を希望するかどうかは別としても、少しでも天文・宇宙物理学の分野の研究をしたいと思っていたり、深く学びたいと思っていたりしているのであれば、大学物理がしっかりと学べるところを選ぶべきです。
このような理由から、大学を決める際に
大学物理をしっかりと学べるカリキュラムになっていること
を見る必要があるのです。
天文・宇宙物理学の講義のある大学・学科でも、必ず物理学のある科目の講義を受講するようにカリキュラムが組まれているはずです。
天文・宇宙物理学の講義に目がいきがちですが、こういった基礎知識を固める部分の講義も大切なのです。
3番目の「教職もしくは学芸員の資格がとれること」というのは、必ずしも必須ではありません。
例えば先生になりたいと思っていたり、博物館などで働いてみたいと思っているときには必要な資格ですので、進路を決める際に調べておいた方がよいでしょう。
(まとめ)天文・宇宙物理学分野の研究をしたい、深く学びたいと思っている君へ
大学の進路を決める際、君が興味を持っている分野に近い研究をしている先生がいらっしゃる大学を志望校に決めるとき、少なくても
大学物理をしっかりと学べるカリキュラムになっていること
をオープンキャンパスや合同説明会、大学案内のWebサイトやパンフレットなどで確認してくださいね。
また、志望する学科ではどのような資格が取得可能かどうかも確認してみましょう。
君の志望校決定のお役に立てますように・・・。