天文学の数式は難しい? 理解の助けとなる書籍を紹介します。

天文学の勉強をするときに、こんな経験をしたことはありませんか?

 

話はわかるけれども、数学や計算がわからない。

 

「数式は簡単そうに見えるのに、どうして出たんだろう?」って・・・。

ここでは、基本的な内容の天文学でてくるような数式をやさしく解説した書籍を紹介します。

宇宙に出てくる数式がわからない!

宇宙に関する本を読むと、初心者向けの多くがお話がメインになっています。

お話には数学や計算から理解するのではなく、イメージで理解するものです。

そのため、計算方法がわからなくても、イメージで理解できてしまうという利点を持っています。

このような話は、数式や観測からわかったことが元になっています。

そして、お話が理解できたところで、使った数式がポンと出てくる。

 

 

この数式から出てくることはわかった。

けれども、この数式からどうやって計算したら答えにたどり着く過程が全く想像できないというのが天文学には多いかもしれません。

これは簡単な数式の割に、その数式の条件が出てくる数式ごとに異なることが原因の一つです。

 

最初の例を紹介します。

年周視差: \(p\) と地球からの距離: \(d\) を表す式

 

\[d = \frac{1}{p}\]

 

は地球の公転軌道の一方の端から観測したときと他方の端から観測したときの恒星の視差と恒星までの距離との関係を表した式です。

この関係から、視差が\(0.314\)”のはくちょう座61番星(※1)までの距離(光年)を求めてみましょうという問題が出題されるわけです。

※1 はくちょう座61番星は、1838年にドイツの天文学者ベッセルが初めて年周視差を測定した恒星。

\(d\) に0.314を代入して計算すると、

 

\[p = 3.18\]

 

になります。

ここまでは大丈夫だと思います。

問題は、この先です。

\(p\) の単位が何かということです。

宇宙の距離でよく使われる単位は光年です。

光が1年かかって進む距離を基準にして、どのくらいの距離があるかを表しています。

しかし、 \(p\) の単位が光年でないのは明かです。

なぜならば、太陽系から一番近い恒星:プロキシマ・ケンタウリ(Proxima Centauri)でも4光年以上離れているからです。

この \(p\) の単位は、「パーセク」です。1パーセクは3.26光年(※2)です。

※2 インターネット版天文学辞典参照 http://astro-dic.jp

 

したがって、答えは、10.3光年が正解です。

この例では、 \(d\) の単位は秒、 \(p\) の単位はパーセクでした。

よく見ると、左辺と右辺で単位が異なりますよね?

それなのに同じ等号で結ばれています。

物理や化学などでは、計算し終えたら単位チェックをすると間違えがないかどうかの確認ができるよと習いませんでしたか?

 

この式は正しくない式なのか・・・。

 

いいえ、この年周視差と距離との関係式は正しいものです。

実は右辺に秘密があります。

単位として、通常使われる光年ではなく、わざわざ「パーセク」を使ったところが「みそ」なのです。

1パーセクは、年周視差が \(1\)”である距離のことと定義しました。

すなわち、年周視差が \(p\)”の場合、距離は \(p\) パーセクと表すことを意味しています。

このことから、年周視差 \(d\) と距離 \(p\) (パーセク)との関係は、逆比例の関係です。

つまり、

 

\(d \propto 1/p\)

 

と書くことができます。

これを比例定数 \(k\) を使って表すと、

 

\[d = k/p\]

 

になります。

\(k\) の単位は、[秒・パーセク]です。

ここで、年周視差1″のとき1パーセクになるよう、 \(k\) の値を決めます。

 

\[1 = k / 1\]

 

より、

 

\[k = 1。\]

 

したがって、

 

\[d = 1/p\]

 

となるのです。

実は、1 のところに「秒・パーセク」という単位が隠されているのです。

この部分の説明がなく、いきなり関係式がでてくるので、わかりにくくなっています。

 

 

もう一つ例を上げましょう。

惑星の公転周期と、平均距離との関係を表したケプラーの第3法則があります。

惑星の公転周期 \(T\) の2乗と惑星の太陽からの平均距離 \(a\) の3乗が比例するというものです。

式で書くと、

 

\[T^2 = a^3\]

 

です。

この式、不思議だと思いませんか?

左辺は時間だけ、右辺は距離だけ。

単位が違うのに「\(=\)」で結ばれているのです。

 

でも、このケプラーの第3法則は、どうやっても右辺と左辺で単位が異なります。

実はこれも比例定数:1が隠されているのです。

比例定数が1になるように、単位を決めたのがケプラーの第3法則、

 

\[T^2 = a^3\]

 

なのです。

 

 

このように、見えない比例定数が隠れているため、わかりにくい状態になっています。

天文学には計算がたくさん出てきますが、今見てきたような不思議な関係がたくさんでてきます。

一見不思議な感じがしますが、計算をしやすくするために単位を決めたと考えるといいでしょう。

 

基本的な数式を解説した書籍

このような天文学に出てくる計算を少しでもフォローできるようにした本が出版されています。

それが、

です。

と書いたのですが、残念ながら絶版・・・。

とおもいきや、岩波書店さんでは、POD(プリントオンデマンド)で販売を継続!!

引き続き、この書籍は紹介していけます(笑)。

POD版の販売サイトは以下のURLから。

 

 

 

天文学の概要を網羅しているテキストではなく、計算でつまづきやすい部分をピックアップしてまとめた書籍です。

したがって、天文学の概要全てを網羅しているわけではありません。

あくまで、基本的な計算に特化しています。

この本で天文学を全て学ぶには無理がありますが、計算になれることによって、他の書籍を読んだときの理解の助けになるはずです。

目次

  1. 単位がわかる
  2. 重力がわかる
  3. 光がわかる
  4. 天体観測がわかる
  5. 星がわかる
  6. ブラックホールと宇宙論がわかる

 

もし天文学の概要を学んでいるときに、計算でつまづいているようでしたら、この本を読むことできっと解決するでしょう。

 

なお、原著はこちら。

原著の サポートサイト では、web上に問題があったり、webcastとして動画を見ることができたりできるので、英語版を読んでみるのもありですね。

天文現象の演習をするならこの書籍

「東京タワーからものを落とすと真下に落ちるだろうか?」

「星の出没時刻は?」

などといった天文現象を実際に計算してみたいと思ったことはありませんか?

 

「天文の計算教室」には、地球のこと、天球のこと、惑星と彗星(すいせい)の運動など、天文現象に関わる問題とその解説がたくさん掲載されています。

少し演習もやってみたいと思ったら、「天文の計算教室」もいいですね。

目次

  1. 地球
  2. 天球
  3. 天球上の座標
  4. 大気差
  5. 時刻と経度
  6. 天体の出没
  7. 視差と光行差
  8. 歳差と章動
  9. 月の運動と満ち欠け
  10. 惑星と彗星の運動
  11. 惑星、彗星の位置
  12. 重力の作用
  13. 惑星
  14. 星の高度
  15. 彗星
  16. 太陽
  17. 恒星

例えば、2惑星の会合周期などは、中学入試や大学入試でも出てきそうな問題ですね。