2015年9月14日、1960年代からの検出の試みがなされた重力波がついに直接検出されました。
一般相対性理論が発表されてから約100年後の出来事です。
それまでも、間接的に重力波を放出しているという現象は観測されていました。
しかし、間接的な効果は全く別の現象がたまたま一致していたという可能性は否定できません。
そのため、重力波の直接検出が待ち望まれていたのです。
(もちろん、間接証明も大切です。間接的な事実があって、次の直接観測を行う動機にもなるからです。)
今回はこの重力波をわかりやすく解説した書籍を紹介します。
ところで、重力波は一般相対性理論のアインシュタイン方程式を解くことで得られる波の解です。
このアインシュタイン方程式は、時空のゆがみと物体やエネルギーの関係を表した方程式です。
そこにある物体の質量やエネルギーが減少した分が重力波となって放出されるというものです。
式で書くと
\[ G_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4} T_{\mu\nu} \]
となります。
(一般相対性理論では、物体の質量とエネルギーは同等であることに注意。
高校物理にも出てくるエネルギーと質量の関係:
\[ E =mc^2\]
より)
式自体は非常にシンプルな形になっています。
しかし、この方程式は、いろいろと複雑に絡み合っているので、解くのが難しいのです。
方程式の解に名前がついているぐらいです。
- シュヴァルツシルト解
- カー解
- フリードマン・ロバートソン・ウォーカー解
など。
このアインシュタイン方程式は、テンソルというもので記述されています。
このテンソルについては大学の物理(もしくは物理数学)で学習しますので、ここでは詳しくは説明しません。
今はアインシュタイン方程式というのは、こんな形をしている程度だという程度で十分です。
式を解くのではなく、その式がどのような意味を持っていて、そこからどのようなことがわかるかということのほうが重要だからです。
そんな解くのが難しいアインシュタイン方程式から出てきた重力波ですが、これをわかりやすく解説した書籍がいくつか出版されています。
その中の一つがブルーバックスの
重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論 (ブルーバックス) 安東 正樹 (著)
です。
この本は、重力波を観測できたと発表した2016年2月から約半年後に出版されました。
重力波が観測されたという話は聞いていても、
「時空が波のように揺れるのをどうやって観測するの?」
と疑問に思うかもしれません。
いやそもそも、重力波って何という疑問があるかもしれません。
この「重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論 (ブルーバックス)」には、そのような疑問をわかりやすく書いています。
重力波望遠鏡というと、なんだか得体の知れない望遠鏡のような気がしますが、aLIGOやKAGRAなどは、マイケルソン干渉計を工夫して作られています。
マイケルソン干渉計というのは、光はエーテルという媒体を通じて伝播するものと考えられていた時に、エーテルを検出するために考え出された装置です(マイケルソン・モーリーの実験)。
ちょうど、物理の光学で実験の名前が出てくるかもしれません。
重力波望遠鏡は、過去の有名な実験器具を応用して作られたものなのです。
物理でいろいろな実験が出てくると思います。
それ自体はその場限りで終わってしまいますが、何か別の実験を行う際、過去の実験でどのようなことをやったかのアイデアを参考にして、新たな装置を作ることはよくあることです。
重力波望遠鏡は、実験を行うだけでなく、その仕組みを理解することで、新たな問題に対する大きな武器になるということを教えてくれています。
また、著者の安藤先生は、2018年4月現在、東京大学理学系研究科 物理学専攻で重力波を用いた天文学、および相対論基礎実験を行っています。
研究内容は、日本の重力波望遠鏡KAGRAやDECIGOなどの重力波観測プロジェクトの推進や実験室内での相対論基礎実験です。
重力波は物理の一般相対性理論から出てきたものなので、物理の守備範囲のようなイメージがありますがが、実際に観測された現象をみると、
- ブラックホール同士の合体
- 中性子星同士の合体
といった天文学の現象です。
物理と天文学は遠いようでいて、実は密接に結びついています。
この事実は、宇宙のことを学びたいのであれば、高校では物理を必ず学ぶべきであるというを教えてくれています。
しかし、今は重力波は検出されたというだけの段階です。
重力波望遠鏡はその性質上、単独の機械では発生した位置を決めるのは非常に難しいのです。
そのため、世界各地で建設が進んでいる重力波望遠鏡の稼働が待ち望まれています。
いくつもの重力波望遠鏡が同時に観測することで、位置を絞ることができ、他の電波や光学望遠鏡、X線やガンマ線といった他の望遠鏡も同時に観測しやすくなるのです。※1
※1 位置がわからないと、他の望遠鏡で探すにしても望遠鏡をどこにむけたらいいのかわからないですから・・・。
いろんな種類の望遠鏡を同じ天体現象に向けることによって、そこで発生している天文現象の理解が深まるのです。
例えば、中性子星同士の合体では、貴金属が大量にばらまかれていることもわかりました。
重力波望遠鏡だけでは、中性子星同士の合体が起こったということはわかりますが、合体したときに何が起こっているのかまではわかりません。
重力波を検出したという知らせを聞いて、他の望遠鏡が一斉に対象の天体現象の起こった位置を観測して、ようやくわかったのです。
実は宇宙のことは理論ではある程度わかっていても、実際にそれが起こっている証拠を見つけられていないことが多いのです。
重力波望遠鏡を手に入れた今、数々の天文現象の謎が解明されることでしょう。
けれども、これは謎が減るわけではありません。
1つの謎が解決したと思ったら、新たな謎が続々生み出されるのです。
合体したブラックホールは成長するけれども、そもそも合体する前のブラックホールはどうやってできたのか?
(超新星爆発を起こしてできるブラックホールの上限は、太陽質量の10倍程度)
実は最初に重力波が観測されたときのブラックホールの質量は、それぞれ太陽質量の35.4倍と29.8倍のブラックホールの合体でした。
これらのブラックホールはどのようにしてできたのかという謎です。
一つのことがわかることで、別の謎が出てくるから宇宙は面白いのです。
重力波を知ることは、宇宙を知ることの一つの手段です。
もし気になる方は、
重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論 (ブルーバックス) 安東 正樹 (著)
を読んでみてはいかがですか?