高校で宇宙の勉強はほとんどない?! 教科書にない本当の話。

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太陽系の惑星の運動は、重力が支配されています。

高校物理の力学の項目で万有引力やケプラーの法則について学びます。

ところがこの後に続く、熱力学や電磁気、波動などは、天体に関する話題が出てこないので、天文学と関係なさそうに思えます。

しかしこれらの内容は、宇宙で実際に起こっている現象を理解するのに必要な知識です。

 

 

明月記など古代の書物に超新星爆発(1054年)の記録が残っていることで有名な「かに星雲」。

可視光で撮った写真を見ると、カニの甲羅のような形に見えます。

陸上に住んでいるカニに似ている姿が宇宙にもあるなんて、なんだか不思議ですね。

 

ところがX線で見ると全く違った様子が見られます。

中心からジェットが吹き出している様子と、星の赤道面に沿ってぐるぐると回転しているリングが見えます。

これは「磁場」によって生み出されている現象です。

非常に速い速度で動いているため相対性理論を考慮する必要がありますが、この現象を理解するには磁場が働いていることから電磁気学が必要になります。

 

 

また、オリオン大星雲の中では、新たに恒星が生まれています。

ここでは、ガスが圧縮されて熱を持ち、やがて中心で核融合反応が起こるのです。

ガスが圧縮されたときに起こる現象は、力学だけでなく熱力学も使います。

 

 

波動の項目で学習するドップラー効果。

このドップラー効果の測定を行ったことで、宇宙が加速膨張がわかりました。

もちろん、光の性質については望遠鏡の原理を知る上でも重要です。

小さな望遠鏡は既製品でありますが、望遠鏡から得られたデータはどのようなものかを知るためには光の性質について知っている必要があるからです。

教科書では宇宙に関することが書かれていないと、その項目は使わないと思ってしまいがちです。

しかし、高校物理の内容はいろいろな項目が関わってきます。関わらない内容はないと言ってもいいでしょう。

 

 

理科以外の科目にも目を向けてみましょう。

天体の動きを知るために用いられる手法が方程式を解くことです。

すなわち、数学です。

 

 

高校では微分や積分を使ったアプローチは行いませんが、物理学は微分や積分と言った数学の力が大いに活用されています。

高校物理の公式は、微分や積分を使った結果を利用しているのです。

 

 

二つの物体の運動がどのようになるかは、方程式を解くことで完全に分かります。

ところが、例えば太陽・木星・小惑星の三つの天体の動き(三体問題)を方程式から解こうと思っても微分や積分などといった操作を駆使しても無条件では解けないのです。

 

たった三つの天体の動きを表す方程式が解けない?

 

理由は方程式の中に出てくる変数の数に対して、方程式が足りないからです!

例えば、

 

\[
x + y + z = 3\\
4x + 2y + 3z = 8
\]

 

という方程式を解くためには、変数が\(x、y、z\) の三つありますので、方程式は三つ必要です。

しかし上記の方程式は二つしかありませんので、何らかの条件をつけないと答えは出ません。

例として、\(x = -z\) という条件をつけると、\(x = 2、 y = 3、z = -2\) と決まります。

このように、何らかの条件をつけることによって解ける問題も出てくるのです。

 

 

三体問題も条件をつけることで解くことができるのを発見したのがラグランジュです。

発見されてから長年、机上の空論だと思われていました。

しかしラグランジュが見つけた解の近辺にトロヤ群と言われている小惑星が見つかったことから、実際に有効であることがわかりました。

現在、この領域の活用が進んでいます。

最近では、ラグランジュの見つけた解の付近に宇宙望遠鏡(例:ケプラー望遠鏡)を打ち上げたりして、活用されています。

 

 

さらにこの三体問題の研究からさまざまな数学も研究されました。

三体問題は微分や積分といった操作では解けないことは分かっていますが、これで問題は終わりません。

現実には少なくても1つは解は存在しています。

現に太陽の周りを惑星が回っているという解があるのですから・・・。

 

方程式は解くことができなくても、その方程式はどういう性質があるかを調べることはできます。

代入する数値がちょっと違うと全く違う答えになるのか、あまり変わらない答えを出すのかという性質を調べる研究もあります。

最近コンピューターを用いたシミュレーション研究が盛んですが、これも三体問題(とそれをN個の問題に拡張したN体問題)の方程式の性質の研究が進んだことによって、初めてシミュレーションができるようになったのです。

 

カオスも天体の軌道計算のシミュレーションを行う際には必ず出てきます。

このカオスも研究対象になりえます。

コンピューターで計算させるのですから、どのようにして現実に近い答えを出すプログラムを作るか、精度よく計算できる数値計算の方法といった研究もあります。

さらに、専用の計算機を作ってしまうというアプローチも。

 

 

このように天文学と数学は密接に結びついています。

数学には天文学に関係した話は出てきませんが、数学を学ぶと言うことは単に技術的に活用するために学ぶと言うだけはありません。

数学もまた天文学を学ぶことのアプローチの一つであると言えるのです(方程式や解の研究というアプローチです)。

 

 

宇宙の言葉は出てこなくても、天文学、宇宙の研究は数学からのアプローチもあるのです。

ただ、こういった最先端の研究はまだ答えが出ていませんので、高校や大学の教科書で教えると言うことはありません。

しかし、その基本となる部分は高校の数学でも学んでいます。

 

私たちは直接出てこないものに対しては、それは関わっていないという先入観を持ってしまいがちですが、それは必ずしも正しくありません。

実は間接的に宇宙の勉強をしているのです。