2015年9月に初観測された重力波。
重力波が観測されたこと自体すごいことなのです。
さらにこの重力波からわかったことは、太陽質量の約36倍と約29倍のブラックホール同士が合体したということです。
ブラックホールを直接観測して見たわけではないのですが、ブラックホールが存在するということを私たち人類に教えてくれた出来事でした。
2018年4月までにブラックホール同士の合体が5例観測されています。
(報告は6例ですが、そのうち1例は中性子同士の合体)
ここまでで確認されたのは、恒星からできるブラックホールや、太陽質量の数十倍のブラックホールです。
太陽質量の数十倍のブラックホールがどのようにしてできるのかは、今後の重力波の観測事例が増えるにつれて、進化が確立されていくでしょう。
しかし、世の中には太陽質量の何百万倍、何千万倍も重いブラックホールが存在するとされています。
それは銀河中心にあるとされている巨大ブラックホールです。
今回は、この巨大ブラックホールの書籍についてご紹介します。
ブラックホールが銀河系の中心に存在するらしいとわかったのは、ほんの数十年前の話です。
天の川銀河などの電波観測から、電波の出ている範囲を絞り込むと、発生源の中心に巨大な質量を持つ天体がないと説明がつかないことがわかったのです。
もちろん、たくさんの恒星がある程度の範囲で密集していても全体で見れば同じ事です。
初期の電波観測では分解能がよくなく、当初はこの可能性が否定できませんでした。
しかし、徐々に分解能が上がっていくにつれて、たくさんの星が密集している状態では、あまりに狭すぎる範囲であることがわかってきました。
また、天の川銀河の中心、いて座A*の周りの恒星の動きを観測していると、中心に大質量の天体があってそのまわりを公転していることがわかりました。
2017年からより大きな分解能を持てるよう、各地の電波望遠鏡が協力して、天の川銀河のいて座A*の中心を観測しているそうです(EHTプロジェクト)。
もしかしたら、ブラックホールが黒い穴なのかどうかがわかるかもしれませんね。
そもそも、ブラックホールは一般相対性理論の方程式から生まれた数学上の産物であると長く考えられていました。
そのため、長い間あまり注目されませんでした。
星の構造と進化の研究で有名なチャンドラセカール先生は1932年に白色矮星の質量に上限があり、それより重い場合にはどこまでもつぶれていくと考えました。
実はこの考え、半分合っていますが半分正しくありませんでした。
というのも白色矮星は電子の縮退圧で支えられており、白色矮星よりも重い場合でも中性子の縮退圧で支えられることがあるからです。
この星は中性子星として知られています。
しかし、中性子の縮退圧で支えられる重さにも限界があります。
中性子の縮退圧でも支えきれないほどの重さになった星は、ブラックホールになると考えられています。
白色矮星からもう1段階踏んだ中性子星というものがありましたが、より重いものはブラックホールになるというチャンドラセカール先生の考えは合っていました。
なお、バイブルとも言われる「An Introduction To T
he Study Of Stellar Structure」は現在でも参考文献としてあげられるほどです。
残念ながら日本語版の星の構造は絶版になってしまっていますが、英語版はPaperback版が2010年に発売されていますので、大手の洋書を扱う書店で見つかるかもしれません。
(大学レベルのテキストですが、知っておいて損はないテキストです。
大学図書館や県立図書館や博物館などの専門書を取り扱っているところであれば、見つかるかもしれません。
このように徐々に明らかになっていると思われるブラックホールでしたが、実はその中身はよくわからないのです。
何しろこの世の中で一番早い光ですら脱出できないので、中からの情報を取得することができません。
さらに相対性理論から生まれたブラックホールも、そこでは相対性理論そのものが計算できなくなってしまうからです。
そんなブラックホールを観測しようと日々研究が進められています。
どのような方法で研究が進められているかを知るための書籍の一つとして挙げられるのが
BLUE BACKS
巨大ブラックホールの謎
宇宙最大の「時空の穴」に迫る
本間 希樹
です。
ブラックホールと言っても、超新星爆発の際にできるブラックホールから銀河の中心にあるとされている巨大ブラックホールまでさまざまな種類があります。
この本では、銀河の中心にあるとされている巨大ブラックホールの
- 発見の歴史(観測の歴史)、
- これまでにわかったこと、
- 今後どのような観測を行おうとしているのか(執筆時点)
について書かれています。
以外かもしれませんが、実はブラックホールの歴史を追うことは、電波望遠鏡の歴史を追うことでもあるのです。
観測技術の向上がブラックホールの観測につながっているのです。
ブラックホールの研究には二種類あります。
一つは数式から理論的にブラックホールを理解する研究やシミュレーションによる実験。
もうひとつは、観測です。
この本はどちらかというと観測のお話です。
ブラックホールの観測ってイメージがつきにくいのですが、どのような観測をしてきて、これからどのように進んで行くのかを知るにはもってこいの本になっています。
気になる方は手に取ってみてはいかがですか?