宇宙には不思議なことで満ちあふれています。
わかっていることもありますが、よくよく調べて見るとわからないことだらけだったりします。
例えば、星の進化について。
ガス状星雲の中で誕生し、核融合反応で自ら光り、そして年老いていきます。
あるものは白色矮星となり、そしてまたあるものは超新星爆発を起こして、中性子星やブラックホールになります。
これらの星の進化は、一瞬の超新星爆発を除いて、何千万年とかかってゆっくりと進化していくものと考えられいます。
つまり、一人の人間が一生かかっても星の変化を見ることは無理だとされています。
ところが、1996年に不思議な現象が発見されたのでした。
日本のアマチュア天文家:桜井幸夫さんが発見した星ですが、当初は新星と考えられていましたが、どうも様子がへんでした。
それ以前の観測データが全くないにもかかわらず、前年よりわずかだけ明るくなっていたのです。
この星は、最終的に白色矮星の表面でヘリウム核融合の暴走である「ヘリウムフラッシュ」という現象で増光したものと考えられています。
白色矮星は、もはや進化せず冷えていくだけの天体であるとされています。
しかし、このヘリウムフラッシュという現象が起こると、星が核融合反応を起こすのです。
つまり、死んだはずの星がいったん漸近巨星分岐星(AGB星, Asymptotic Giant Branch Star)に
「戻る」
のです!
そしてHR図上で進化の過程をたどります。
ただし、少し残っていた燃料に再点火しただけなので、数百年もしないうちに再び白色矮星になります。
この事実はわずか数百年のうちに星の進化の過程を見ることができることを意味しています。
常識が必ずしも正しいとは限らないのです。
その白色矮星も実は発見されたときは「非常識な星」でした。
一番最初に発見されたのは、エリダヌス座オミクロン2星。
二番目に発見されたのがシリウスBです。
1844年にドイツの天文学者:フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルさんがシリウスの軌道の揺らぎを発見しました。
しかし、このときは伴星を発見できませんでした。
主星であるシリウスAが揺さぶられるぐらいですから、ある程度の質量があってもおかしくありません。
それなのに、なかなか見つかりませんでした。
伴星が見つかったのはそれから22年後のことでした。
しかし、その性質は全くもって奇妙な天体だったのです。
暗くて小さいにもかかわらず、密度が非常に大きい天体。当時の天文学では考えられないような天体だったのです。
しかし、この二つの白色矮星が発見された当時は一般相対性理論がでたばかりで、星の進化論もまだよくわかっていませんでした。
当時の天文学者から見れば、全く以て常識の通用しない星だと頭を悩まされていたことでしょう。
このように、今わかっていることだけでは説明のつかない現象が宇宙にはたくさん起こっています。
宇宙はわかっているようでいて、まだまだ不思議なことでいっぱいなのです。
そんな不思議だらけの宇宙ですが、近年はたくさんの観測機器がそろってきました。
赤外線望遠鏡から可視光、X線、ガンマ線、そして重力波望遠鏡までさまざまな観測機器があります。
以前は赤外線なら赤外線だけ、X線はX線だけと別々に取り扱っていたのですが、それを変える出来事が発生いたしました。
2017年8月17日に検出された重力波でした。
それまでは重力波がブラックホール同士の衝突であることはわかっていたのですが、あくまで観測できたのは重力波だけでした。
しかし、2017年8月17日観測された重力波は違いました。
世界中の観測施設や機関によって、ガンマ線から近赤外線に至るまで幅広い波長域での観測することができたのでした。
その結果、中性子星同士の合体により、貴金属を大量放出するということがわかったのです。
例えば超新星爆発を一つとっても、そこでさまざまな波長域の電波が発せられます。
そのため、一つの現象を理解するためには多くの波長域の電波を観測することが必要になります。
ところが、ある現象が発見しても他の波長域の望遠鏡が使えないことが多々あり、それまでは単独でしか観測できていないことが多くありました。
天体現象はいつ起こるかわかりません。
そのため、ある天文現象に対しては1チャンスしかありません。
近年、このような不便を解消しようと、それぞれの機関が協力して同じ天体を観測できるような体勢が整いつつあります。
このように、さまざまな観測施設や機関が協調して観測して調査する天文学を、マルチメッセンジャー天文学といいます。
今後、2017年8月17日に観測された重力波の検出による成果のように、いままでは断片的でしかわからなかったことがわかるようになるかもしれません。
このカテゴリーでは、宇宙に関する不思議なことをまとめてあります。
そして、それを研究している大学もわかる限り調べ掲載しています。
これらの情報が、高校生の君の進路決定に役立つことを祈っています。