研究者を目指している君へ。
研究者になるときには、いくつか知っておかなければならないことがあります。
- 研究テーマには保険をかけること。
- 確実にデータが回収できる装置にすること。
自由研究の課題はあっても、ここまで指導を受けたことがありますか?
もしかしたら、初めて聞いたかもしれません。
すごく当たり前のように聞こえますが、このような考え方は、学校の授業では学習しません。
なぜなら学校では答えのわかっている内容を学習するのですから、このような困難にぶち当たらないからです。
しかし、研究を目指すとなれば話は違います。
わからないことを知るために研究を行うのですから、困難にぶち当たるのは当然の話なのです。
そのときに求められるのは、学校の勉強だけでは身につかないこともでてくるのです。
どのような能力が必要かというを知るには、実際に大学の先生に聞くのが一番です。
しかし、高校生の君にはそのチャンスが巡ってくることはなかなかありません。
ではどうしたら知ることができるのか?
一番よい方法は、取材をまとめた書籍や自伝を読むことです。
ノーベル賞を受賞したとなると、メディアも注目しますので、取材をまとめたものや自伝が出されやすくなる環境にあります。
日本でもノーベル賞を受賞されている先生が何名もいらっしゃいます。
物理の分野でも湯川秀樹先生を始め、2018年までに9名の方が受賞されています。
今回は宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献で、ノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊先生の書籍を紹介します。
なお、余談ですが、超新星爆発1987Aのニュートリノを捉えたカミオカンデには続きがあります。
後継機スーパーカミオカンデでは、ニュートリノ振動を捉え、その結果、2015年に梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受賞しています。
小中学校の理科の夏休みの宿題で自由研究というものがあります。
理科に関するものであれば何をやってもいいのですが、ときどきニュースでロケットの打ち上げを自由研究にするというインタービューを見かけます。
無事に打ち上がれば、それでレポートが完成するのですが、問題は発射数秒前での打ち上げ中止。
ロケットは確実に宇宙空間に打ち上がることが期待されますから、少しでもトラブルの予兆が見られると停止するのは当然です。
この確実性から考えると、打ち上げ中止は当然のことですが、それだと困る人がでてきます。
ロケットの打ち上げを自由研究にしようとしている子です。
ロケットが打ち上がることを期待して打ち上げの様子を見に行っているのです。
提出の最後のまとめはおそらく「無事に打ち上がりました。」ではないかと思います。
だから打ち上げ中止になると、自由研究ができなくなると思って、がっかりするのです。
もっとも打ち上げ中止の理由を調べて、そこから何か考察すれば立派な自由研究になるはずです。
ですが、無事に打ち上がらなかったという答えの自由研究の結論はどうも都合が悪いようです。
これが夏休みの終わり頃になると、慌てて他の題材を探すことになり、半ばやっつけ・・・。
これだど、ロケットに振り回された夏休みという感じがするかもしれません。
このことは、研究をする上で大切な事は何かを教えてくれているのです。
研究になると、結果がわかって当然ということはなくなります。
わからないから研究するのですから、試行錯誤の連続です。
「大きな結果がでればめっけもの」
そのような世界かもしれません。
例えば、大統一理論で予言されている陽子崩壊現象。
実験装置が置かれている神岡で何十年もの観測が続けられていますが、2018年4月現在でも観測されたという報告はありません。
でも、神岡から2つのノーベル物理学賞がでましたね。
内容は陽子崩壊現象ではなく、「同じ装置」でニュートリノの観測を行ったことによる結果なのです。
主目的である陽子崩壊現象の観測はできていませんが、カミオカンデとその後継機スーパーカミオカンデのおかげで、ノーベル物理学賞が受賞できたと言っても過言ではありません。
この事実は研究をする上で何が必要かを教えてくれています。
最初に書いた
- 研究テーマには保険をかけること。
です。
この思想は、カミオカンデを設計された小柴先生によるものです。
なぜこれが必要なのか?
この答えが書かれている書籍がこちら。
朝日選書 物理屋になりたかったんだよ
ノーベル物理学賞への軌跡
小柴昌俊著
朝日新聞社
です。
ニュートリノ天体物理学はどのような話よりもむしろノーベル物理学賞を受賞するまでの研究生活がメインになっています。
ブルーバックスも「ニュートリノ天体物理学入門」というタイトルで出していますが、こちらはニュートリノ天体物理学の入門に関するお話がメインです。
小柴先生がどのような研究生活をしてきて、そこでやってきたこと、そこで学んだことがうまくまとめられています。
その小柴先生の行動をたどることで、研究に必要なものは何かを垣間見ることができるようになっています。
研究に大切な事は何かを学んでおくことは、学校では教わらないけど、大切な事なのです。